近世陶磁器解説1―やきものの発達


1 焼きものの種類

焼きものは、粘土や陶石を使って成形し焼成したもので、新石器時代世界各地で発明された「土器」に初現をもとめることができます。それ以降製作技術の変遷や、機能分化をたどりつつ、実用道具として人類社会の歴史とともに発達してきました。

一方で可塑性に富む原料の性質上、比較的自由な成形・施文を可能とするため、創始期より単なる実用品としての機能以外に、呪術的効果を期待したり、芸術的表現の対象として、精神的な要素があたえられてきました。

焼きものについては、上の対称的な視点に代表されるように、様々な評価・分類が可能ですが、以下では主に原料・焼成方法の違いから、土器・陶器・b器・磁器の4種類に分類し、それぞれの特徴と、津軽地域におけるあゆみをみていきます。

 

@土器

土器は、粘土を材料とした素焼きの焼きものです。摂氏800度前後で焼成され、褐色に焼きあがるものが多くなります。津軽地域においては、約13,000年前の縄文時代草創期、「無文土器」としてはじめて出現します。

その後も、「縄文土器」、「弥生土器」、古墳〜平安時代の「土師器」「瓦器」、中世〜近現代の「かわらけ」等と、長期にわたって利用されています。

  縄文土器(中里町深郷田遺跡)    土師器(中里町中里城遺跡)

A陶器

狭義には、粘土で成形し釉薬(うわぐすり)をかけて焼いたものを指します。専用の窯により、摂氏1000〜1300度で焼成されます。素地は焼きしまりが弱く多孔質で、吸水性があります。

津軽地域においては、平安時代の「灰釉陶器(東海地方産)」が初現ですが、本格的に普及するのは、「瀬戸」・「渥美」・「常滑」等東海地方の陶器が大量に流通する鎌倉時代以降です。なお、近世以降は、「唐津」に代表される九州産の「肥前陶器」が急速に普及します。

 

Bb器

不吸水性の素地に釉をかけずに、摂氏1200〜1300度の高温で焼きしめたものをb器と呼んでいます。

古墳〜平安時代に焼かれた「須恵器」や、「珠洲」・「越前」等中世の北陸地方で製作された焼きものが相当します。

  須恵器(中里町深郷田遺跡)      珠洲(川内町鞍越遺跡:個人蔵)

C磁 器

陶石(磁石)で素地をつくり、釉薬(うわぐすり)をかけて、摂氏1300〜1400度の高温で焼成されたものです。焼き上がりは、素地がガラス化して半透明となり吸水性はほとんどありません。

津軽地域においては、平安時代末頃より、中国製の「青磁」・「白磁」が散見されますが、本格的に普及するのは鎌倉時代以降で、中国製「青磁」・「白磁」・「青白磁」・「染付」、朝鮮製「青磁」等の製品が普遍的にみられます。なお、近世以降は、「伊万里」に代表される九州産「肥前磁器」が普及します。

青磁(青森市尻八館遺跡:青森県立郷土館蔵)

 

2 国産陶磁器の展開

古代末になると、焼きものの当初より盛んに利用されてきた土器がほぼ姿を消し、陶磁器や漆器・鉄器が食器の中心となります。とくに陶磁器は、流通の発展を背景に国内外の製品が大量に消費されるようになります。

時期によって器種・生産量の変化がみられるものの、無釉の壷・甕・鉢類を焼いた常滑(愛知県)・備前(岡山県)・越前(福井県)・信楽(滋賀県)・丹波(兵庫県)・珠洲(石川県)、また主に施釉陶器を生産した瀬戸(愛知県)・美濃(岐阜県)などが、中世の主要な陶器窯です。