平成13年度夏の企画展  ―素朴と絢爛の意匠美―

古伊万里名品抄 資料解説


資料紹介1 染付芙蓉手VOC鳳凰文大皿(径39センチ:個人蔵)17世紀後半から18世紀、肥前磁器は著しい技術革新を遂げ、中国製品に取って代わって海外輸出の時代を迎えます。その象徴的製品が、オランダ東インド会社(Vereenighde Oost Indische Comragnie)の略称であるVOCマーク入りの大皿です。これらの磁器は、東南アジアを経て、遠くイスラム世界やヨーロッパの王侯貴族の宮殿を飾りました。柘榴に鳳凰をあしらった当染付も、かつてはオランダの貴族館で所蔵されていたものです。

資料紹介2 染付山水文水注[ケンディ](高さ21.3センチ:個人蔵)

独特な注ぎ口を有する水柱で、俗に「ケンディ」と称されます。イスラム教の儀礼で浄水を入れるために利用され、同教が盛んなインドネシア等東南アジアで用いられました。18世紀前半ころ輸出されたものと考えられます。

 


資料紹介3 染付楼閣山水文耳付水指(口径11.0センチ 器高18.2センチ:個人蔵)

青みを帯びた釉調に山水の風景が霞み、間を生かした構図に神韻縹渺とした奥行きを与えています。全体的に重厚な造形もあいまって荘厳な印象の水指です。

茶陶の名品が多い佐賀県山内町百間窯の製品と考えられています。

 


資料紹介4 染付漢詩文柑口花生(口径8.0センチ 器高21.0センチ:個人蔵)

茶陶の精神が横溢する名品。漢詩「水流元入海月落天不離(人間も自然界と同じように、本分をいつも逸脱しないように心すべきであるの意)」が雅味溢れる書体で的確に配され、独特の風韻を感じさせます。

 


資料紹介5 染付鎬福壽字天目碗(口径11.4センチ 器高7.7センチ:個人蔵)茶陶を意識して制作されたと考えられる初期伊万里の名碗。柔らかく焼き上がった生掛けの釉膚に、格調高く「福壽」の字が染め付けられています。重厚でありながら柔らかく馴染む手取りと相まって、茶席に相応しい仕上がりとなっています。高台内無釉。

資料紹介6 色絵菊椿菖蒲文輪繋透鉢(口径24.6センチ:個人蔵)乳白色の白磁胎に鮮やかな椿と菖蒲の花が配された柿右衛門様式の鉢。高台円圏内には草花文、裏文様は赤彩の梅文が施され、非常に丁寧な仕上げとなっています。

また口縁の透かし文様は轆轤で水引きした後、型打ち技法により輪繋ぎの陽刻文を形成し、生乾きの状態で切り透かしたものです。

 


資料紹介7 染付陽刻魚形大皿(長径39.0センチ:個人蔵)鱗・鰭とも濃淡のあるぼかしにより精緻に表現されています。藍の発色が冴え渡り、堂々と遊弋する鯛を見事に活写した柿右衛門様式の大作です。裏面は山水文、高台内には「福」草書体銘が描かれています。

資料紹介8 色絵花果人物文鉢(口径20.5センチ 器高10.0センチ:個人蔵)椀形の鉢で、見込中央に牡丹文、内側面に柘榴、仏子柑、牡丹が描かれ、外側面には赤玉文を配して、唐人物を描いています。高台内に「大明萬暦年製」の銘があります。

資料紹介9 染付牡丹文八角大瓶

(口径6.2センチ 器高34.4センチ:個人蔵)

深みのある藍色を用いて、力強い筆致で牡丹が描かれていjます。いわゆる藍九谷様式の面取瓶で、堂々たる古格を感じさせる逸品です。

 


資料紹介10 金彩紋章花唐草文輪花皿

(口径24.0センチ :個人蔵)

輸出伊万里の一種で、見込み中央部に金彩ならびに鮮烈な赤・緑でヨーロッパ貴族の紋章、また裏面にも金彩による草花文が丁寧に描かれています。結婚式の贈答用に発注されたと考えられています。

 


資料紹介11 胎陶色絵陽刻鶴形皿

(長径16.1 :個人蔵)

陶器質の素地に、鮮やかな色絵を施した意匠皿です。極めて薄い造りの型打ち皿で、高台も糸切細工によって変形に貼り付けられています。

 


資料解説12

  色絵南蛮人船文蓋物(口径11.4センチ/器高7.5センチ)

紅白に掛け分けられた地に、2艘の南蛮船と13人の南蛮人が描かれています。また、蓋・碗ともに高台内には巻物文が描かれます。18世紀後半ころの製作と考えられます。