V  中里城跡環境整備の段階計画

 本環境整備基本構想の策定にあたって、環境整備を実施する場合の段階計画をある程度明確にさせておく必要がある。

 整備にあたっては、補完的な発掘調査や用地取得等が必要となってくるであろうが、その結果いかんによっては、計画変更もやむを得ない状況がでてくるかも知れない。

 事業計画を策定するにこうした不測の事態も考慮し、余裕のある計画で対応する必要がある。

 

1 発掘整備調査

 中里城跡の環境整備に関しては、第U章に詳しいように、昭和60・61年度約8,800uの用地買収を行った後、同用地(町有地)とその周辺部を対象に、同62年度歴史調査、63年度試掘調査、平成元〜4年度発掘調査が実施された。基本構想(本書)並びに基本計画は、同調査に基づいている。

 なお、整備構想・整備計画は、町有地(T郭並びにT―U郭間尾根の一部)以外のU・V・帯郭等部分を含むものであり、以上の整備対象部分については、用地買収→発掘調査→埋戻し・盛土保存→公園化という段階が原則である。しかしながら、表1の如くU・V・帯郭等の大部分は未買収・未調査である。

 したがって、今後具体的な整備の進行状況に応じて、用地買収並びに発掘調査を順次実施していかなければならない。用地買収計画に関しては次節に譲るとして、本節では今後の発掘調査計画について述べる。

 各年度の調査対象区は、平成6年度T郭帯郭(d)並びにT−U郭間(l)、U郭平場(f:神明宮)、同7年度U郭帯郭(g)・(h)・(i)、同8年度T郭平場(b)・(c)、V郭(j)、T−V郭間(m)とし、トレンチ方式による遺構確認に努める。

 またこれら以外にも、随時必要に応じて試掘調査を実施し、環境整備へ反映させていく予定である。

 

[表1]整備対象地の現状

対象区 現況 町有地(指定) 発掘調査 整備構想 整備計画
T郭平場(1) a 原野
T郭平場(2) b 畑地    
T郭帯郭(1) c 山林  
T郭帯郭(2) d 山林   一部○
U郭平場e 神社    
U郭帯郭(1) f 山林    
U郭帯郭(2) g 山林    
U郭帯郭(3) h 山林    
V郭平場 i 神社    
W郭平場 j 神社      
T―U郭間 k 山林 一部○ 一部○
T―V郭間 l 山林    

 

[表2]環境整備に係る発掘調査計画

対象区 a b c d e f g h i j k l
平成5年度                        
平成6年度                  
平成7年度              
平成8年度                
平成9年度 未        定

 

2 環境整備計画

 平成4年度で実施した「中里城跡環境整備基本構想」の作製は、本書をもって完了することとなるが、今後これを基とした基本計画・実施設計、そして工事着手の諸段階を経て「史跡公園化」をめざすものである。

 そのための段階計画は、およそ下記の計画に基づき進めるものとする。

 

[表3]環境整備計画

年 度 摘     要 対象区域 面積 金額千円 備  考
平成4 基本構想(完成)        
平成5 基本計画     1,000 業者委託
平成6          
平成7 実施設計・工事 T郭およびその周辺   金額後日記入 業者委託
平成8 実施設計・工事 T-U郭の間   金額後日記入 業者委託
平成9 実施設計・工事 その他   金額後日記入 業者委託

 

3 活用の在り方

 文化財の保護には、「貴重な文化的財産を後世に継承する」という保存の面と「可能な限り多くの人々が利用できる」という活用の面のふたつの面があり、その整合が課題となるが、この課題の解決を図りながら最大限の活用をしていくことが重要であろう。

 また、今日のように複雑に変化する自然的、社会的、文化環境とのかかわりの中で、人々は、心身の健康保持増進、自己の形成、生活の向上などの生活課題について、学ぶ機会を求めることが増大しており、史跡公園に対するその役割が期待されている。

 このような観点から、遺跡を損傷しない限度内での活用のあり方としては次のことが望まれる。

 @来訪者が恵まれた環境の中で遺構との対話ができたり、自然を満喫しながら自由に散策できること。

 A文化財保護の認識を深めながら、歴史に親しみ、当時の生活等を学習・体験できること。

 B史跡としての価値や自然観察の場を生かした簡単なレクリーション等ができること。

 また、これらのことを円滑に進めるためには、次の方策を講ずるべきであろう。

 @史跡公園の存在を周知徹底

   ポスター、パンフレット配布、広報紙や各種新聞への掲載、公的機関でのPR等、あら  ゆる機会に史跡公園の存在を周知する。

 A交通の便を確保

   基幹道路から史跡公園までのアクセス道路を整備し、利用者の交通の便の確保に努める

 B史跡を教育の場とすること。

   説明板や資料を準備するだけでなく、案内もできる体制をつくる必要も考えられよう。特に団体の見学者についての対応を確立する必要がある。

 C各種の行事企画

   公園を舞台として各種行事を開催し、人々の足を史跡公園に向け、関心を高める方法も必要である。

 

4 管理の在り方

 本施設の管理運営については、貴重な文化財として保護対策に万全を期すことはもちろん、「可能な限り多くの人々が利用できる」という活用の観点から利用者が失望感を抱くことのないよう、配慮されるべきであろう。

 具体的には、管理条例等を制定して運営されるであろうが、おおむね次の点に留意して進めるべきと考える。

 @土砂崩落、雪害などの自然災害に対する適切な防災措置に努める。

 A来園者が、安心かつ安全に見学できるよう転落防止等事故対策を講ずる。

 B町民憩いの場として、便益施設や修景施設の機能保全に努める。

 C宅地化や土砂採取等による遺跡全体の形状が損なわれないよう公有地化もしくは何らかの方法で現状を保持する。

 D管理運営主体は、町及び教育担当部局が、住民団体等の協力を得ながら進めるのが望ましい。

                                 (事 務 局)