考古学替歌集
学生時代よく歌われたものを9本集めてみました。
酒宴の席等で、伝統的に歌われてきたものなので、
制作者等は不明です。一説では、群馬県「かみつけの里博物館」
学芸員の若狭さんがつくったという話も・・

壊れても好きな土器(ロスインディオス&シルビア「別れても好きな人」)

壊れた土器に逢った  壊れた現場で逢った

壊れた時と同じ雨の夜だった

繊維がいっぱい黒浜  貝殻ギザギザ浮島

不気味な勝坂・阿玉台  ブタ鼻安行

やっぱりつなげられない  ボンドも石膏もつかない

ボロボロ崩れてしまう  だめよ弱いから

 

狸堀り(久保田早紀「異邦人」)

子供たちがエンピ握り  遺跡にむかい

土器や石や骨までも掘りだそうとしている

その姿は  昨日までの何も知らない私

遺物がコレクションできると信じていた

空と大地が  広がる現場

過去からの  旅人を呼んでる遺跡

この遺跡にとって私  ただの遺跡あらし

ちょっと掘りすぎてみただけの狸堀り

 

纏向ひとり旅(山本譲二「みちのくひとり旅」)

いつか一緒に掘れたらいいと飛ばぬエンピの先を見る

プレと縄文の現場を捨てて

纏向ひとり旅

後髪ひく黄色い水糸

ヘラで断ち切るいじらしさ

修業つんだら  いつかは掘れる

プレでも掘れるだろう

たとえどんなにエンピを飛ばせても

たとえどんなにジョレンが引けても

俺には鈴木が最後の男

俺には鈴木が最後の男

 

センチメートル単位(松本伊代「センチメンタルジャーニー」)

投げ捨てられる覆土のように

遺跡の表土がめくれるたびに

つまみを回し  レベルを読むの

センチメートル単位

遺構の中で夢を見ていたい

影絵のように美しい  物語だけを見ていたいの

僕はまだ補助員だから

だれかに誘われて  現場に誘われて

センチメートル単位

 

縄文時代(「青春時代」)

期限ぎれまでの半年で  遺跡を掘れというけれど

120も出てきた竪穴を  何で測ればいいのだろう

縄文時代が夢なんて  他人がほのぼの思うもの

縄文遺跡のまん中には  穴がボコボコあるばかり

 

土師須恵音頭(「東京音頭」)

ハア〜考古やるなら  チョイト土師須恵音頭ョィョィ

和泉 鬼高 和泉 鬼高 真間 国分

ズズイと掘ったら須恵が出た

ズズイと掘ったら土師が出た

調査員も作業員も  エンピ持って 移植持って

あげちゃっていいじゃないか

へるもんじゃないじゃないか

 

土色のナンシー(速見優「夏色のナンシー」)

土器かなyes!  土器じゃないyes!

石かなyes!  石じゃない

土を掘るたび  気分もゆれる

そんな年頃ね

住居サイドで  移植を止める

そんな私をあなたにらんでる

調査員の後をついていくだけの

考古学徒から  卒業してみたい

If you love me

土色の恋人

If you love me

土色のナンシー

去年とは堀り方が違ってる

土器かなyes!  土器じゃないyes!

石かなyes!  石じゃない

土を掘るたび  気分もゆれる

そんな年頃ね

 

遺跡めぐり(「岬めぐり」)

あの頃時は終戦直後  納豆つんで行商あるき

一人暮らしはむなしいけれど  古人を追うのは楽し

今日も今日として行商めぐり  自転車押して切り通しめぐり

ロームに光る黒曜石は  洪積世の人の足跡

遺跡めぐりの自転車走る  前に広がる赤城の山よ

悲しみ深く胸にしずめたら  この丘越えて家に帰ろ

 

明治大学学術調査  一日二日とフレイクばかり

もうすぐやめよう雨降りだした  思ったところにハンドアックス

報告でたが名前はのらず  杉原先生独り舞台

俺は在野の誇りを胸に  赤城の裾を今日も行く

遺跡めぐりの自転車走る  赤城下ろしを背に受け今日も

悲しみ深く胸にしずめたら  夢は広がる先土器文化

 

掘るわ(あみん「待つわ」)

えらそうな顔してあいつ役に立たない奴と

言われ続けたあの頃  発掘がつらかった

掘ったり 切ったり 削ったり私の現場仕事

いつか遺構を任されるってことは永遠の夢

赤く広いこの現場  誰のものでもないわ

床に一ひらの土器  飛ばして  飛ばされて

私掘るわ  いつまでも掘るわ

たとえ担当者が振り向いてくれなくても

掘るわ  掘るわ  いつまでも掘るわ

他の現場からお呼びがかかる日まで

 

悲しいくらいに私  いつも酒宴の席では

おどけて見せる道化者  理性なんていらない

わかり切ってる方法論  平気で言ってみて

一人ぽっちのときには  そっと報告書を開く

なのに考古の本質を見ぬくことはできない

だけどあなただけにはわかって欲しかった

私掘るわ  いつまでも掘るわ

たとえ担当者が振り向いてくれなくても

掘るわ  掘るわ  いつまでも掘るわ

せめて遺物をみつめていられるのなら