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2001/7/22
いよいよ学社融合推進モデル事業の3回目縄文のくらしB「野焼き体験」の模様です。7月14日午前8:00ころから3ヶ所で焚き火をおこない、床面をしっかりと乾燥させます。1ヶ所は土器焼成用、1ヶ所は土偶焼成、もう1ヶ所は調理用です。このとき、火の周りに土器・土偶を並べ、まんべんなく回転させながら温めます。午前9:30、子供たちがやってきます。早速火床の中に土器・土偶を並べ、その周りで徐々に火勢を強めていきます。

さてその間子供たちは、土器と並ぶ縄文時代の一大発明であるとともに、食料獲得の重要手段である弓矢体験を行います。この弓は、柄は木製、弦は蔦製の立派なもの。矢もちゃんと樹脂製の石鏃が装着されています。弓矢体験は、5人づつの5班対抗で行われ、5メートルほど離れた地面に描かれた同心円上のターゲットを狙って競われます。最初1回づつ練習しますが、なかなか上手に射ることができません。

矢を離す瞬間に弓も離してしまう子や、力が入りすぎてしまう子など、失敗者が続出するなか、いよいよ本番が始まります。縄文堝の材料が懸かっていますのでどの班も必死です。一位は野菜・肉とも豊富に入った材料、最下位は肉なしという、縄文時代の狩猟生活さながらですので、どの班も負けられません。熱戦の結果、第5班・同4班が上位を獲得しました。

次は火起こし体験。軸に紐を巻き付け、勢いよく回転させながら摩擦熱で木屑に発火させます。チームの息が合わないとなかなかうまくいきません。結局1班のみが、着火に成功しました。水を入れた縄文土器を火に掛けて、沸騰させます。その間に、黒曜石で材料を切り分け、縄文調理実習。20分後、見事に沸いたお湯の中に材料を投入して、最後に塩で味付け。

あたりに美味しそうな匂いが漂ってきます。しばらく煮込んで、いよいよ縄文鍋試食タイムのはじまりです。杓子でお椀に盛りつけ、こわごわと口を付ける子たち、次の瞬間美味しい!との歓声が上がります。なかには他班の残りをもらう子達もいます。土器というのは案外美味しくものを煮ることができます。

お腹も膨れたところで、ちょうど土器・土偶が焼き上がります。なかには破裂して粉々に砕けたものもありますが、原型をとどめているものが多く見受けられます。ほとんどの子は、自分の土器と土偶を見つけて大喜び。さらに灰の中から破片も探し出す子たちもいます。結局、成功率は8割程度、去年の博物館教室では4割程度でしたので、一気に歩留まりが倍増しました。何が良かったのかは定かではありませんが、大成功の野焼き体験となりました。同時に案外に素直でまじめな子供たちの縄文人度も確実にアップしたようです。

1学期の学社融合推進モデル事業は、今回の野焼き体験で終了です。2学期は、博物館学芸員のしごと体験が全4回実施されます。そのときまた報告をしたいと思います。

堝の材料が掛かる弓矢体験

焼きはじめの土器 焼きはじめの土偶
火起こし体験 さらに黒曜石で調理実習 その間に堝は煮えたぎる
試食タイム 焼き上がった土器 割れたかけらを探す
2001/7/18
さて、大分間隔が開きましたが、6月14日に実施された学社融合推進モデル事業の2回目縄文のくらしA「土器・土偶をつくろう」の報告です。

旧石器時代縄文時代の画期については、様々な定義・指標が提案されていますが、そのなかでも土器の発明は、大きな比重を占めるものと思われます。そういった時代背景を説明したうえで、土器の用途や影響について考えてもらい、発表してもらいました。ちなみに中里町立博物館の常設展示では、縄文土器の発明については以下のように説明しています。

旧石器時代から縄文時代にかけての、もう一つの大きな技術革新が土器の発明です。土器で煮ることによって保存・殺菌効果が高まり、食べられる物の種類も増えました。乳幼児・老人・病人むけの食事が可能になり、病気の予防や寿命の延長をもたらしました。

また、ドングリ類のアク(渋み)を抜いたり、干し貝を大量につくることができるようになり、温暖化にともなって発達した植物採集・漁撈活動を支える道具として、原始社会に大きな役割を果たしました。

実際の土器作りは、「野焼き粘土」という専用粘土1sを用います。本来であれば、地元の土を処理して、土作りから行えばより学習効果が高まると思いますが、今回は時間の関係もあって見送りました。まず粘土を4等分し、3/4を土器作りに用い、1/4を土偶作りに回すため袋に保管します。

一生懸命粘土を練ったあと、一つかみの粘土を丸めて、段ボール製の敷板に押しつけ、土器の底部をつくります。この際、一端敷板から剥がしておくと、後々取り上げるとき、底部の離れが容易になります。粘土の圧着を高めるため、底部周縁を窪ませます。次に、適量の粘土を紐状に綯って、底部に貼り付けていきます。一周づつ積み重ねていく輪積法と、連続して螺旋状に重ねていく巻上法がありますが、とりあえずは成形の容易な前者の方法をとりました。しかし容易といっても最初はなかなか上手にいきません。一度できちんと作り上げる子もいれば、何度も壊して作り直す子も少なくありません。前回勾玉が上手にできた子も、今回は苦労している様子です。

粘土紐の太さにもよりますが、750gの粘土から底径10p高さ15pほどの土器ができあがります。次は整形ならびに施文です。器壁の厚みを調整し、粘土紐のつなぎ目を丁寧に消していきます。撚糸文や縄文原体を転がしたり、押圧して施文します。さらに先を削った割箸で沈線文様を描いたり、刺突文を施して完成させます。成形で苦労した子達も、嬉々として施文に取り組んでいます。

そしていよいよ完成、次は土偶の製作です。一応厚紙で作った板状土偶の型紙を用意しましたが、基本的に自由課題としました。板状土偶をつくる子の他には、遮光器土偶やキャラクター人形をつくる子、一風変わったオブジェをつくる子等、本当に様々です。土器と違って、技術的な制約がないぶん、みんな自由な発想で作れたようです。今回もあっという間の3時間でした。あとは2週間ほど乾燥させて、いよいよ野焼きに入ります。そのもようは次回お伝えしたいと思います。

縄文土器の説明 力いっぱい粘土を練る 底をつくって窪ませる

粘土紐を積み上げる 慎重に整形作業 縄文の施文

土器の完成 土偶つくりは自由な発想で できあがった作品群
2001/6/16
中里町立博物館では、今年度学社融合推進モデル事業の一環として、中里町立武田小学校6年生を対象とした出前授業を実施しています。1学期は、縄文のくらしをテーマとして3回、2学期は博物館のしごとをテーマに4回が予定されています。1回目の縄文のくらし@「勾玉をつくろう」が、去る6月7日(木)に行われましたので、若干の感想を交えて報告したいと思います。

持ち時間は、9:20〜11:15の約2時間。比較的軟質の滑石を用いて勾玉をつくりますが、まずその前に、勾玉について若干学習します。原始時代の道具を色々展示し、子供たちに分類してもらいます。ちょっと難しいかなとも思いましたが、指名された子は、「大きな道具」と「小さい道具」、「戦いに使う道具」、「石でできた道具」・・・など一生懸命考えながら、マグネット付きの模型を黒板に貼り付けていきます。

いろいろな種類の道具があることを実感するとともに、材質別や機能別・製作技術別・時期別等、各種の分類方法を学習するのがねらいです。さらに縄文時代には、「第一の道具」とよばれる実用的な道具と、「第二の道具」とされる呪術的・装飾的な道具があることを伝え、勾玉は後者に属することを理解してもらいます。

その上で、いよいよ製作に取りかかります。3*1.5*1センチほどに加工した板状の滑石に、鉛筆で下絵を描いていきます。続いて竹製の錐に摩擦材をつけながら、穴を開けていきます。力と根気のいる作業ですが、不思議と途中で投げ出す子はいません。隣同士競いながら、穴開けに集中しています。30分後、「開いたっ!」という歓声があちこちから湧いてきます。1時間後にはほぼ全員穴開けに成功し、縄文人の苦労と達成感を味わうこととなりました。

しばしの休憩後、成形作業にかかります。本来は石で磨くのが筋でしょうが、時間の関係もあり、紙ヤスリに登場願いました。粗目の紙ヤスリで大まかな形を整え、細目で細部を仕上げていきます。最後は水ヤスリで磨き込みます。すると紙ヤスリでついた傷跡がみるみる消えていき、滑らかになるとともに、輝きを増してきます。ここでもまた「きれいっ!」という歓声があちらこちらから。

事前のテストでは10分余りで穴が開き、時間が余るのではと危惧しましたが、蓋を開けてみると結構時間がかかりました。とにかくあっという間の2時間で、未完成の子もいましたが、満足げな顔と、完成した勾玉を大事そうにしまう様子に、ほっと胸をなで下ろしました。家で2個目に挑戦する子供たちも多く、予備に持ってきた石材もすべてなくなりました。子供たちって案外飽かさないものですね。次回は土器・土偶づくりです。

道具の分類に四苦八苦 下書きは結構難しい
穴開けは根気のいる作業ですが、みんな一生懸命

水をかけながら仕上げ磨き しだいに光ってくる勾玉 自慢の作品