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2002/3/8

去る3月2日(土)、「なかさと冬の魅力発見」実行委員会主催によるヒバの花見学会に参加してきました。誘われた当初は、多少戸惑いました。青森県の木に指定されているとともに、日本三大美林を背後に抱える中里町にとって、ヒバはとても身近な木、というより材木です。しかしながら、奥深い山地にあるヒバの立木を見る機会に第一恵まれませんし、その花がどんなものなのかは考えたこともないと言うのが正直なところです。聞くところによると、ヒバは寒中に結実し、初春に花を開くとされます。

それをみんなで観察し、この地に大昔から生育し、中里の歩みを眺め続けてきたヒバ、多くの恩恵を与えてくれたヒバのことを学習して、足下の事柄−郷土学−を究めよう。そうして、できれば従来ネガティブなイメージでとらえられてきた「冬」の隠れた魅力を再発見しようというのが今回の趣旨のようです。

午後13時、あいにくの吹雪の中、50人近くの参加者を満載したマイクロバス2台が中里町立中央公民館を出発します。国道339号線を北上したあと、山手方向へ曲がり、近年整備された広域基幹林道に乗り入れます。荘厳な冬景色の中を揺られること約30分、基幹林道広場に到着です。眼前に大導寺牧場、遙か彼方には津軽平野・屏風山がかすんでいます。

このころには雪も止んで、いよいよヒバ林に分け入ります。森閑とする林の中を長蛇の列が進んでいきます。細いルートを少しでもはずれると、たちまち腰まですっぽりと埋まってしまいます。約15分ほどで自然観察教育林に到着。早速東北森林管理局青森分局森林技術センター青山次長・高木専門官による森林教室が開催されます。本物のヒバを目の前に、機器を使用した幹径や樹高の計測方法などが示され、初めて目にする子どもたちは興味津々。

ここで森林教室は佳境に入り、ヒバの花の観察となります。ここで衝撃的な話が青山次長さんから述べられました。なんと、ヒバの花はわずか数ミリの微小サイズで、しかも枝先にあるために肉眼では観察不可能とのこと・・・。遙か頭上の梢と、用意してくれた拡大写真とを交互に見ながら、それでもヒバの不思議な生態に触れられて満足しました。

教育林からさらに徒歩20分、今度はアップダウンのきつい道のりです。渓谷沿いに張り付いた細いルートを伝い、ようやく目的地の不動滝に到着しました。寒さの中でも、滝は凍っておらず、盛んに飛沫をあげていました。冬の滝はなかなか厳粛な様子で、霊験あらたかな気持ちにさせてくれます。不動滝の東屋では、滝の水から湧かした温かいコーヒーと、炭火で焼いた干し餅が、私たちを出迎えてくれました。

不動滝は、中里川の上流に位置する滝で、不動尊が祀られるています。不動信仰は、大日如来の使者である不動明王を祀るもので、円仁(慈覚大師)・円珍のあとを受けて、天台密教(台密)の充実をはかった相応によって広められました。滝にこもって難行苦行を行っていた相応が、ある日滝の中に不動明王の姿を見いだして思わず抱きついたところ、それは一本の桂の木でした。その桂で不動明王像を刻み、観音と毘沙門の三尊を祀り、葛川明王院を開創したのがその始まりとされます。  

以来、滝に不動明王を祀る例が盛行し、とくに津軽地方では水源的信仰と結びついて信仰される場合が多いようです。中里川の不動滝もこうした修験道場として知られ、現在も滝に打たれる山伏修行者の姿を見ることができます。

帰途は、かつての森林鉄道軌道跡を通って砂防アイランドへ抜け、そこからバスに乗車しました。中央公民館に戻ったあとは、隣接する「宝寿荘」で入浴タイムとなり、強ばった体も温泉ですっかりリフレッシュ。その後は、生で見てきた感動をさらに深めるための、中里町の歴史・森林に関する学習交流会が行われ、参加した小学生たちの感想も聞くことができました。

最後は、懇親会。参加者の自己紹介や今日の感想などで盛り上がり、予定の時間を超過してヒートアップしていました。最初は面倒に感じたヒバ見学会でしたが、久しぶりに雪道を歩く楽しさと、森林浴効果もあって、気分は上々。すっかりと「冬の魅力」にはまった一日となりました。

バスから降りる参加者たち カンジキを履いて準備万端 「冬の魅力発見」出発
いよいよ森に突入

森林教室の開催

ヒバの花

干餅と滝水コーヒーで休憩

冬の不動滝

不動明王

2002/3/3
松本先生率いる薄市小学校3年生13名が、このほど博物館にやってきました。意気揚々と現れた子どもたちは、やる気満々で気合いが入っている様子・・・。それもそのはず、後ろに待機する先生は左手にビデオ、首にはカメラをぶら下げ、すでに「ズーム・イン」態勢。

常設展示室で、時代順の説明に聞き入る3年生!!続いて、みんなのおじいちゃん・おばあちゃんが子どもだった頃にタイムスリップ。全員ボドドンドャ(昔の仕事着)に身を包み、昔の道具体験に初チャレンジ!!

といっても、何せこれら刺し子の着物は、耐久性と保湿性に優れているのでとても暑い。「んっ〜回らな〜い!!」と汗だくで石臼を回してくれたのは、クラスで一番力持ちの男の子。引木を回しながら、上臼の穴に少しづつお米を入れると「ほらっ」、少し回しやすくなります。そうなんです、穀物を入れることによって摩擦が少なくなり、回しやすくなるのです。でも「この仕事は大変だ〜」とリタイア・・・。

薦編機を使って藁を編んでくれた女の子は、とても初めてとは思えないほど上手!!楽々クリアしました。子どもたちに一番人気だったのが、轟々と回転音をあげる、泣く子も黙る足踏脱穀機。踏み板をタイミングよく踏んでやると、ドラムが回転して歯車が回る仕組みです。

伝統的な農具の唐箕千歯扱きの体験も終わり、最後は質問コーナー。いろいろな質疑応答が飛び交い、薄市小学校13名は、勉強したことをまとめて無事帰っていきました。そして博物館には再び静寂が訪れ、藁くずの後始末が残されたのであった・・・(KO)

*松本先生より、子どもたちが書いてくれた感想文が寄せられましたので紹介いたします;

「博物館でいろいろ見学させてもらって、昔の人はを使ってナイフやどうぶつをとる武器も石でできていて、昔の人はきようだったんだなぁーと思いました。ぼくが石でつくるとしたらきようにつくれないと思います。昔の人はきようですごいなぁーとかんしんしました。あと博物館の人も12,000てんあつめてすごいなぁと思いました。」松舘亮典くん

「わたしは、博物館に見学に行ってきました。昔の人が着ていた服を着せてもらって、きっぷなどもやらせてもらいました。昔のことをたくさん教えてもらいました。」野上裕美香さん

「わたしは、昔の道具をたくさん見て、こんなに昔の道具があるなんてすごいなぁと思いました。12,000いじょうあることが勉強になりました。」野上紫央里さん

「ぼくは、博物館に行ったら昔の物がたくさんあったし、しらない道具があってびっくりしました。それに昔の人がわらで、かごやきる物を手で作っていたので頭もいいし、すごいと思いました。」成田全くん

「わたしは、博物館で昔の道ぐの名前や使い方などを教えてもらって、昔のくらしのことが前より分かるようになりました。でも、まだわからないことがたくさんあるので、また博物館に行って調べたいです。昔の道ぐについていろいろと勉強になりました。おせわになった人もいろんな体けんをさせてくれました。とてもいい、勉強になりました。」中村夏美さん

2002/2/26
第2土曜日にあたる2月9日、博物館こども教室「津軽の冬しごとと遊び」が開催されました。昨年は厳しい寒さの中での「かまくら」作りでしたが、2年目の今年は、少雪と雨に悩まされながらも、去年よりも一回り大きな「かまくら」が無事パルナス玄関前に完成しました。

いよいよ当日、かまくらの中にを敷き、火鉢七輪に炭を入れ、熾火を起こします。羽釜に研いだお米と水を入れ炊飯の準備をします。うまく炊けるかどうか心配です。「すいとん」はだし汁がすでにできているので、あとは練った小麦粉を子どもたちに入れてもらえばできあがりです。

さらに前日に洗っておいたじゃが芋を鍋いっぱいに入れ、火鉢に掛けます。鍋から立ち上る湯気を眺めながら、ふと30数年も前の記憶がよみがえってきました。

あれは確か、学校から帰った時のことです。吹雪のために、頭から足下まで真っ白になりながら家に帰ると、母が座敷箒で雪を払い落としてくれました。

居間へ入ると、「しみさ(大根の葉を干したもの)」を煮ている匂いがしました。薪ストーブにかけられた鍋がぐつぐつと音を立てていますが、木の落とし蓋がされていて中身は見えません。

しばらくすると、母が鍋の底からじゃが芋を取り出してくれました。ホクホクのじゃが芋を潰して、フウフウ息を吹きかけながら、お腹いっぱいになるまで食べたことが昨日のことのように思い出されます。

そんな思い出に浸っているうちに、子どもたちがやってきました。吹雪の中、朝一番にお父さんとやってきた男の子二人。切り餅を火鉢の網にのせ、膨れてきたら醤油をつけていただきます。子どもたちは「熱い!おいしい!!」といいながら、たくさん食べます。お父さんも「これはこのまま、何もつけずに食べてもおいしいんだよ」と話しかけながら、一緒に食べています。話が弾んでくる頃には、すでに大勢の子どもたちが・・・。

ちょうどじゃが芋が煮えました。割り箸に刺して、火鉢でちょっと焙り、紙に包んで潰します。これも湯気の上がったホクホクのところを口にほうばります。若いお母さんは、「簡単なのに、とても美味しい。家に帰ったらみんなに食べさせよう」と言っていました。

やがて3歳の男の子が、お母さんと一緒に「かまくら」の中に入ってきて筵に座りました。じゃが芋をお母さんに食べさせてもらい、小さな手を火鉢で左右交互に暖めています。時々、外で遊んでいる子が顔をのぞかせて「じゃが芋とお餅を焼いておいて!」と、また外へ駆けだしていく。外で遊ぶ子どもたちの声が楽しそうに響いていました。

かまくらの中は、ローソクの仄かな灯りと温もりが漂っています。羽釜を七輪にのせ、しばらくするとグツグツ音を立てて、思いの外早くに沸騰します。蒸らしが終わり、分厚くて重い木蓋を取ると、かまくら中に湯気が立ち上り、しゃもじについた一粒一粒が透き通るように輝いて見えました。早速、みんなで味わってみると、案外うまく炊けるものです。「美味しい」とお代わりをする人もいました。

角巻長着を纏い、踏俵藁沓を履き、「ズグリ」で遊ぶ。そして「かまくら」で昔懐かしい味を試食する。つかの間の冬体験でしたが、笑顔で帰る子どもたちも、また一ついい思い出ができたようでした。(Ka)